出産や育児に向いている職業として『看護師』はよく知られていますが、『ITエンジニア』という選択肢はあまり耳にしません。実際に10年ほど前までは、『ITエンジニア』の職場環境は他の職種と比べてあまり良いものではなく、おすすめできるものではありませんでした。
しかし、時代は変わり、現在ではIT業界の職場環境は大きく改善されました。今では、出産や育児に適した環境が整っており、むしろその業務特性から『看護師』と同様に、出産や育児に向いている職種となっています。
それでも、一般的にはまだ過去のイメージが根強く残っており、『ITエンジニア』という職業に対するイメージはあまり良くないのではないでしょうか。そこで今回は、『ITエンジニア』が出産や育児に向いている理由について、詳しく述べていきたいと思います。
育児休業と育児休暇の違い
前提知識として、育児休業と育児休暇(育児目的休暇)の違いを簡単に説明します。
育児休業
- 法律で定められた公的制度
- 原則としてどの企業でも対象者や期間などは同じ
- 一定の要件を満たせば雇用保険から給付金が支給される
育児休暇
- 従業員の育児支援のために企業が独自で定めている制度
- 対象者や期間は企業により異なる
- 給付金の有無は企業により異なる
『育児休業』は法律によって定められているため、企業による差異はありません。しかし、『育児休暇』は企業の努力義務であるため、企業によって大きな差異があります。育児休業と同等の給付金がもらえる企業もあれば、給付金がない企業もあります。また、期間の長さにもばらつきがあります。企業側に余裕がないと実現できないため、大企業のほうが良い条件であることが多いです。就職先を選ぶ際は、どのような制度があるかを確認しておきましょう。
詳しくは以下の厚生労働省の説明資料を参照ください。
育児休業と育児目的休暇の違いについて
ITエンジニアが育児に向いているポイント
それでは『ITエンジニア』が出産や育児との両立に向いている職業と考える理由を説明します。
柔軟な働き方が選べる
ITエンジニアの業務は在宅で行えることが多いため、テレワークを導入している企業が比較的多いです。また、店舗スタッフや営業職とは異なり、時間に縛られることが少ないため、フレックスタイムなど柔軟な働き方ができる企業も増えています。さらに、時短勤務を導入している企業も多く見られます。
また、これが重要だと思っているのですが、そういった制度が利用しさすい雰囲気があります。
上記のような制度があっても、職場の雰囲気が追いついていないと制度を利用しにくいですが、IT業界は新しい業界で平均年齢が若い、かつIT系ということもあり、柔軟な考えの人が多いです。
業務調整がしやすく、復帰も容易
プロジェクト単位で働くことが多く、人の入れ替えも多いので業務調整がしやすく、休みに対する心理的負担も少ないです。
「技術」はどのプロジェクトや企業に行っても共通なので復帰も容易です。このあたりは看護師や弁護士といった業種に近いです。
高い市場価値があり転職もしやすい
ITエンジニアはあらゆる業界で需要が高く、人材不足が続いています。また、「技術」は世界共通であるため、勤務する企業が変わってもこれまでの経験や知識を活かすことができます。そのため、他の職業と比較して転職がしやすい職種です。
出産や育児で生活環境が変わることも考えられます。勤める会社の制度では対応できない場面もあるかもしれませんが、そのような場合でも「転職」が一つの選択肢となりやすい職種です。
少しハードルは上がりますが、フリーランスという選択もできます。
産休・育休取得時の心理的ハードル調査
「ITエンジニアが語る産休・育休の現実:心理的ハードルとサポートの課題」という面白い調査があります。産休・育休を取得する際の心理的ハードルの調査ですが、心理的ハードルと年収に相関関係があったとのことです。
特に年収500万以下の層で心理的ハードルがとくに高いという結果が興味深いです。
産休・育休をする世代で年収500万以下ということは、勤務している企業が一部上場しているような企業ではないと推測できます。そういった企業では資金や人材にも余裕が無いので「制度はあっても利用しずらい」状況であると思われます。
また、キャリアに対する不安についても年収が低いほど格差を感じるとの結果でした。最初の前提に記載したとおり、企業規模によって状況が大きく変わる点には注意してください。