「システムエンジニアはやめとけ」という記事をよく見かけます。内容は似通っており、間違いではないのですが、前提や説明が不足していると感じることが多いです。個人的にはシステムエンジニアは良い仕事だと思うので、「やめとけ」と言われる理由について、そうではない点も含めてお話しします。
「システムエンジニアはやめとけ」の理由についてはGoogle検索で一番上位にでてきた以下のサイトに記載されている内容をベースにします。
長時間労働になりやすいから/長時間の残業や休日出勤を求められるから
1)プロジェクトの締め切りや顧客の要求に応えるために、しばしば時間外労働が必要
2)常に最新の知識を追いかける必要があるため、自己学習のための時間も確保する必要
の2点が理由として挙げられています。
時間外労働(残業)について10年ほど前までは実際に他業種と比較して多かったのは事実と思いますが、最近では大企業を中心に『働き方改革』、『ワークライフバランス』が進んでおり改善が進んでいます。
厚生労働省の統計 毎月勤労統計調査 令和4年分結果確報 によると平均の所定外労働労働時間は「10.1時間」になっていますが、システムエンジニアについても同じぐらいかなと思います。ただしこれは一部上場企業を前提とした場合です。そうでない場合は「企業や部署、プロジェクトによる」としか言えませんがこれはシステムエンジニアに限ったお話ではありません。
「顧客の要求に応えるため」という点は、システムエンジニアに限った話ではありません。これは職種によるものではなく、会社や個人のマネジメント力や調整力に大きく依存します。
システム切替などの作業は、営業時間外に行う必要がある場合が多く、休日出勤が発生することも事実です。しかし、多くの場合は年に1回程度であり、代休も取得できるため、大きな問題ではないと考えます。
「常に最新の知識を追いかける必要がある」という点については、高い給与を得たい場合やキャリアアップを目指す場合にはその通りです。しかし、実際に自己学習をしてスキルアップを図るエンジニアは全体の3割にも満たないと思います。(そういったエンジニアでもやっていけるということです)また、自己学習をしている人たちは最新の技術に興味を持ち、楽しんで取り組んでいるため、「追いかける必要がある」というよりも、楽しみながら行っているので、それが喜びとなるか苦しみとなるかは個人によると思います。
給料がなかなか上がらないから
これは全くピンと来ませんでした。むしろ上がりやすい職種と思います。
「継続的な自己投資が、直接的な給与の向上に結びつかない場合が少なくない」と記載されていますが、どういったケースがあるのかイメージする事が出来ませんでした。
システムエンジニアの世界は実力主義なので、技術力やビジネス力があればすぐに昇進出来ますし、転職も容易です。実力があれば転職で給与をアップすることも比較的簡単な職種のはずです。実際に私も何度か転職をしていますが、転職のたびに給与はアップしています。
「実力主義」ということで、自己投資をしてもスキルアップしていなければ給与が上がらない・・とうことはあるかも知れませんがそれはしょうがないかな・・と思います。
スケジュールが厳しいから/ストレス過多になりやすいから
ここはあまり反論がありません。「スケジュール(納期)のプレッシャー」、「技術的な問題の解決や不確定なプロジェクト要件に対応するプレッシャー」などは実際に良くあります。
最近は「納期」だけではなく「品質」「生産性」に対する要求も高くなりつつあるので作業に対するプレッシャーは少なくないと思います。
ただ、それなりの仕事をしようとするとこういった要求はどの職種でもあるとは思うので、システムエンジニアの仕事だけが突出しているか?と言われると違う気もします。
昇進しにくいから
これに関してはあまりピンと来ませんでした。私の周りではこういった話は聞いた事がありません。「技術力の向上とともに、プロジェクト管理やチームリーダーとしての能力が求められることが多いものの、能力に見合ったポジションは限られています」と記載がありますが、IT企業では慢性的にプロジェクトマネージャーは不足しており、ポジションはいくらでもあり、高待遇の求人も非常に多いです。
技術が好きで、管理はしたくない人がキャリアアップしたい場合に『技術系のキャリアパスが無い』というのはあります。技術系で高収入が得られるのは限られた大企業だけになるためです。
常に勉強しなければいけないから
キャリアアップを目指すのであればそのとおりです。テクノロジーやプログラミングが好きな人にとっては「苦しみ」ではなく「楽しみ」になりますが、好きではない人には大変なので辞めておいた方が良いかなと思います。
仕事の裁量権があまりないから
システムエンジニアに限らず、企業や自身のポジションによって役割は変わります。上流工程に進むほど、顧客の要望や上層部の指示に従うだけでなく、提案やプロジェクトのリードが求められ、裁量権も大きくなります。また、サービス企画や事業計画に関わることもあります。
そのため、「自らの技術的な判断や創造性を発揮する機会が少なくなる」とは感じません。企業は利益になる技術や創造性を持つ人材を積極的に活用します。厳しい言い方になりますが、機会が少ないと感じるのは、技術や創造性が十分でない事が原因だと思います。
スキルアップできるとは限らないから
「実際には日々の業務に追われ、新しい技術を学ぶための時間を確保することが難しい場合が多い」とありますが、私の知る限り、スキルアップしていく人とそうでない人の違いは本人の意識次第です。スキルアップする人はどこでも成長していきます。
年齢が上がると続けにくくなるから
これは全く違うと思いました。若い人と同じペースでスキルアップするのは難しいとありますが、ベースとなる知識が多いほど、少ない労力で新しい知識を学ぶ事が出来るので、むしろ若いエンジニアの方が技術習得は大変だと思います。
多くの技術は全く何も無いところから生まれるのではなく、既存の技術の組み合わせや改善によって生まれてきます。なので既存の技術を知っていれば新しい技術の習得も早くなります。
例えばクラウドというと新しい技術に聞こえますが、ネットワークの知識、OSの知識、シェルの知識、プログラミングやデータベースの知識などは当然必要で、基礎となる技術があれば、クラウド固有部分の学習だけで大丈夫ですが、新人エンジニアであればこれらを全て学ぶ必要があります。
多くの場合、新しい技術というのは今まで自前でプログラミングしていたものや、システム構築していたものが簡単になるケースがほとんどなので、ベテランエンジニアからすると大変というより楽になったなと感じる事の方が多いと思います。
最後に
皆さん、いかがでしたでしょうか?少しでもシステムエンジニアの仕事に魅力を感じていただけたなら幸いです。私自身、この業界で長年の経験がありますが、それでも知っていることは限られています。ここでお話しした内容は全てではありませんが、皆さんの就職選びの参考になれば嬉しいです!
以上