はじめに
新人の皆さんはチームリーダーやプロジェクトマネージャーの立場ではないため、「プロジェクト管理」の知識は不要だと思うかもしれません。しかし、リーダーでなくても「プロジェクト管理」の知識は非常に有用です。
将来、管理する立場になった時に役立つのはもちろんですが、管理者の視点を理解することで、担当者としての進捗や課題報告がより良くなります。また、自分自身のタスク管理にも応用できます。さらに、基本的な用語を知ることで、管理者とのコミュニケーションもスムーズになります。
「自分にはまだ早い」と思わず、ぜひ積極的に学習してください!
本の選定ポイント
少し古い本が多くなりましたが、新人エンジニアにおすすめの本【WEBシステム編】と同様に、はやりに関係なく長期間にわたって汎用的に役立つ知識が得られる本を選定しました。
『プロジェクト管理』の本質的な部分は昔から変わらないので古い本でも色あせないものが多いです。10年、20年経っても売れ続けているのがその証拠です。
また、単純に知識が得られるだけではなく、できるだけ読み物として面白いものを選定しました。特に海外の著書は読み物として面白いものが多いので、勉強のために・・と構えずに読んでみてもらえればと思います。
プロジェクト管理手法、ツール
システム開発のためのWBSの作り方
WBS(Work Breakdown Structure)は、プロジェクトを階層化・整理する手法です。多くの現場で進捗管理に利用されており、早めに基本を抑えておくことをおすすめします。
この本はもともと雑誌で連載されていた内容をまとめたもので、分かりやすい内容になっています。WBSはシステム開発だけに利用されるものではありませんが、本書ではシステム開発のWBSに特化した内容になっているため、ITエンジニアの方には特に理解しやすいと思います。
新人の方はWBSを作成する機会は少ないかもしれませんが、プロジェクトマネージャーが作成したWBSをもとに作業を進めることはよくあります。そのため、WBSの基本を知っておくと、プロジェクトマネージャーの意図を理解しやすくなります。また、現場で作成されたWBSを理解することは自分の知識を高めるのに非常に有用です。
何も知らずに現場のWBSを見ても気づきが少ないですが、基本を知ってから見ると、今まで気づかなかった点に気付くことがあるはずです。リーダーになってから慌てないように、担当者のうちに学習しておきましょう!!
アジャイルサムライ−達人開発者への道
アジャイル開発について学ぶなら、この本がおすすめです。アジャイル開発の基本から応用までを体系的に、わかりやすく解説しています。読み物としても非常に面白く、スムーズに読めます。著者のソフトウェア開発に対する愛が伝わり、読み終わる頃にはソフトウェア開発が好きになっていると思います。
アジャイル開発を学びたい方はもちろん、ソフトウェア開発に関わるすべての人に読んでほしい一冊です。アジャイルの手法には賛否両論がありますが、この本を通じてソフトウェア開発の楽しさを感じていただければと思います。
改訂7版 PMプロジェクトマネジメント PMBOK®ガイド対応
PMBOK(Project Management Body of Knowledge)」とは、プロジェクトマネジメントに関する知識を体系的にまとめたガイドで、プロジェクト管理の世界標準とも言えるものです。アメリカの非営利団体PMI(Project Management Institute)が発表しています。
この本はPMBOKの入門書なので、初めてプロジェクト管理を学ぶ人に最適です。プロジェクト管理で何を管理すべきか、計画の作成方法、そしてプロジェクト管理の手法について、プロジェクトマネージャーが最低限知っておくべきことを網羅しています。さらに、適度な事例も紹介されているため、理解しやすい内容となっています。
この本に記載されている用語をしっておくだけでも現場で役立つと思います。PMBOKの知識はプロジェクト管理における自動車運転免許書のようなものなので基礎知識は身につけておきましょう。
リーダーシップ/コミュニケーション
だから僕たちは、組織を変えていける —やる気に満ちた「やさしいチーム」のつくりかた【ビジネス書グランプリ2023「マネジメント部門賞」受賞!】
この本は、読者が選ぶビジネス書グランプリ2023のマネジメント部門で第1位を獲得したベストセラーです。今の時代に適したマネジメント本で、目次にもあるとおり「21世紀のマネジメントは『数字』から『人』へ」という考え方に基づいた本で、「人」に焦点を当てたマネジメント論です。
特に「心理的安全性」の重要性について、一章を使って詳しく説明しています。私自身の経験からも、「心理的安全性」はチームのパフォーマンスを向上させるために非常に重要であり、多くの点で共感できました。
「アメとムチ」のような古い考え方は、今では時代遅れです。これからの組織やリーダーのあり方、そしてチームのモチベーションを高める方法について学んでみてはいかがでしょうか。
ピープルウエア 第3版
古典とも言える本ですが、「人」に焦点をあてた内容のため、現在でも色あせていません。著者は「トム・デマルコ」で本書を含め多くのベストセラーを出しています。読み物としても面白く飽きずに一気に読めると思います。
サブタイトルの「ヤル気こそプロジェクト成功の鍵」の通り、プロジェクトが失敗する原因の多くが「技術」などではなく「人」にあると考え、プロジェクトを成功に導くための考え、手法を多く提示してくれています。実際にプロジェクト管理をしているとこの本にかかれている通り、チームのコミニュケーションやメンバーのモチベーションの大切さを感じる事が多々あります。
この本で記載されている悪い事例は私自身も納期が迫ったり、プレッシャーのかかる場面でやりがちなものが多く記載されており、自分自身何度も読み返して改善するよう努力しています。新人の方は大きなチームをマネジメントする事はないかも知れませんが、1,2名の管理をすることはあると思います。そういった場合でも役立つ考えが記載されているのでぜひ読んでいただきたいです。